人材アセスメントとは、管理職などの役割を模した演習に取り組んでもらい、そこで表れた行動を、訓練を受けた複数のアセッサー(評価者)が観察・記録し、能力の観点ごとに評定する仕組みです。過去の実績ではなく、演習という「今ここ」での行動から、上の立場でどのように仕事を進めるかを見通そうとする点に特徴があります。

昇格や管理職への任用を前に、「人材アセスメントを受けてください」と言われ、何をするのか分からず不安に感じている方も多いと思います。

この記事では、20年にわたり人材アセスメントに携わってきた立場から、受ける人の目線で、人材アセスメントの仕組みと流れ、そこで何が見られているのかを解説します。

人材アセスメントとは

人材アセスメントは、アセスメントセンター方式とも呼ばれます。仕事の場面を再現した演習を用意し、その中で受講者が実際にとった行動を手がかりに、能力を評定します。

その起源は、軍の将校の選抜にあるとされています。その後、1950年代にアメリカの大手通信会社が管理者の選抜と育成に取り入れたことで企業に広まり、日本でも1970年代から、管理職の登用や育成の場で使われるようになりました。

人材アセスメントの背景には、「人の行動は、その人自身と、置かれた状況との組み合わせで決まる」という考え方があります。いまの職場で十分に力を発揮している人でも、立場や状況が変われば、同じように動けるとは限りません。そこで、一つ上の立場の状況を演習で用意し、その中での行動を見るのです。

何のために行われるのか

人材アセスメントの目的は、会社によってさまざまですが、おおむね次のように分けられます。

  • 選抜:管理職への任用や昇格を判断する材料にする。
  • 能力開発:本人が自分の強みと課題に気づき、育成につなげる。
  • 診断:組織として、管理職層にどのような強みや課題があるかをつかむ。
  • 早期の発見:将来の幹部候補を早めに見つけ、計画的に育てる。

選抜の場面で使われることが多いため、「試験」と受け止められがちです。しかし、どの目的であっても、結果は本人の強みと課題として返され、その後の成長に生かされるのが本来の姿です。

人事考課と何が違うのか

日頃の人事考課は、上司が、これまでの仕事ぶりや実績をもとに評価します。それに対して人材アセスメントは、次のような点が違います。

  • 見る時点が違う:過去の実績ではなく、演習での「今ここ」の行動を見ます。
  • 見る立場が違う:いまの役割ではなく、一つ上の役割に求められる行動を見ます。
  • 見る人が違う:直属の上司ではなく、訓練を受けた複数のアセッサーが見ます。
  • 見る中身が違う:能力を「持っているか」ではなく、実際に「発揮しているか」を見ます。

人事考課と人材アセスメントは、どちらかが正しいというものではありません。二つの違う角度から見ることで、その人の姿をより確かにつかもうとするものです。

どのような演習があるのか

人材アセスメントの演習は、管理職が仕事で出会う三つの場面をもとに組み立てられます。

1.一人で仕事を処理する場面:インバスケット演習

管理職の立場で、限られた時間の中で多くの案件を処理します。何から手をつけ、誰に任せ、どう指示したかが表れます。
→ 詳しくは:インバスケット演習とは ― 回答はどう評価されるのか

2.集団で話し合う場面:グループ討議演習

数名で一つの課題について話し合い、結論を出します。司会や役割を決めずに行うことが多く、議論の進め方や、周りへの働きかけ方が表れます。

3.一対一で向き合う場面:面接演習・分析発表演習

部下との面談をロールプレイで行う面接演習では、相手の話を聞き、問題を整理し、次の行動につなげる力が表れます。資料を分析して考えを発表する演習が組み合わされることもあります。

多くの場合、これらの演習を1日から数日かけて組み合わせて行います。一つの演習だけで判断せず、複数の場面での行動を重ね合わせて見ることで、評価の確かさを高めているのです。

何が見られているのか

人材アセスメントでは、管理職に求められる能力を、いくつかの観点に分けて見ていきます。観点は、大きく三つの側面にまとめられます。

  • 思考的側面:情報を読み取り、問題を分析し、取り組むべき課題を定め、判断し、計画を立てて進める力。
  • 対人的側面:人に働きかけ、納得を得て動かし、相手の状況を察し、部下を育てる力。
  • 資質的側面:自分の考えで主体的に動き、高い目標に挑み続け、プレッシャーの中でも力を発揮する姿勢。

立場が上がるほど、こうした力の重みは変わっていきます。担当者のうちは、仕事そのものを上手にこなす力が中心です。しかし管理職になると、人を通じて成果をあげる力や、物事の全体を見渡して方向を決める力が、より大きな比重を占めるようになります。人材アセスメントが「一つ上の立場」の演習を用意するのは、この変化を確かめるためです。

評価はどのように決まるのか

アセッサーは、演習中の受講者の発言や行動、インバスケット演習の回答を、まず事実として記録します。言葉だけでなく、表情や姿勢、周りへの目配りといった言葉以外の動きも記録の対象です。そして、記録した行動を能力の観点ごとに整理し、どの程度発揮されていたかを評定します。

最後に、アセッサーが集まる会議で、それぞれの記録と評定を突き合わせ、すべての演習の結果をあわせて総合的な評定を決めます。結果は、強みと今後の課題をまとめた報告書などの形で返されます。

インバスケット演習の評価の流れは、次の記事で詳しく解説しています。
→ 関連記事:インバスケット演習の回答は、誰が、どのように評価するのか

受ける前に、知っておきたいこと

普段の仕事ぶりが、そのまま表れる

演習の場面は限られた時間で進むため、普段の仕事の進め方がそのまま表れます。演習の中だけ、理想の管理職を演じることはほとんどできません。だからこそ、日頃の仕事の中で、全体を見渡してから手をつける、任せるときは期限と報告を示す、相手の話を最後まで聞く、といった行動を積み重ねておくことが、何よりの準備になります。

「しなかったこと」も、行動として読み取られる

発言しなかったこと、手を打たなかったこと、確かめなかったことも、その人の行動の傾向として読み取られます。実際の職場でも、黙っていれば周りには伝わらず、手を打たなければ仕事は動きません。

結果は、成長の材料になる

人材アセスメントの結果は、合否や順位だけのためにあるのではありません。返ってきた強みと課題は、これからの仕事の進め方を考える材料です。課題は一度にすべてを直そうとせず、日常の仕事の中で一つずつ試していくことをお勧めします。

まとめ

  • 人材アセスメントは、演習での行動を複数のアセッサーが観察・記録し、能力の観点ごとに評定する仕組み。
  • 人事考課が過去の実績を見るのに対し、演習という「今ここ」の行動から、一つ上の立場での仕事ぶりを見通す。
  • 演習は、一人で処理する場面(インバスケット)、集団で話し合う場面(グループ討議)、一対一の場面(面接演習など)を組み合わせて行う。
  • 見られるのは、思考的・対人的・資質的の三つの側面。普段の仕事ぶりがそのまま表れるので、日頃の行動の積み重ねが準備になる。

管理職に求められるマネジメントと、人材アセスメントで見られる能力については、次の解説動画でもお話ししています。

よくある質問

人材アセスメントに、対策はありますか。

決まった答えを覚えて臨む、という意味での対策は、ほとんど役に立ちません。演習では、普段の仕事の進め方がそのまま表れるからです。役に立つのは、演習の形式を事前に知って落ち着いて臨めるようにすることと、日頃の仕事ぶりを振り返り、一つ上の立場ならどう動くかを考えておくことです。書籍の演習に取り組み、自分の回答を読み返してみるのも一つの方法です。

どのくらいの時間がかかりますか。

会社や目的によって異なりますが、複数の演習を組み合わせて、1日から2〜3日かけて行うことが多く見られます。最近は、インバスケット演習をオンラインで行うなど、形も多様になっています。

人材アセスメントの結果だけで、昇格が決まるのですか。

どのように使うかは会社によって異なりますが、人事考課や面接など、ほかの材料とあわせて判断に使われることが一般的です。人材アセスメントは、それまでの実績とは別の角度から、その人の姿を見るための材料の一つです。

評価するのは、社内の人ですか、社外の人ですか。

どちらの場合もあります。人材アセスメントを専門とする社外の機関に任せる会社もあれば、社内でアセッサーを育てて自社で行う会社もあります。いずれの場合も、アセッサーは観察と評定の訓練を受けています。

あなたの回答は、どう評価されるのか

書籍の演習を、ご自宅からオンラインで受験できます。人材アセスメントに20年携わる著者が、回答に表れた仕事の進め方を案件ごとに読み解き、強みと今後の課題をレポートでお返しします。

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執筆者

西山 真一(人事総務マネジメントサービス株式会社 代表取締役)。社会保険労務士・中小企業診断士。著書に『人材アセスメント受験者、管理職のためのインバスケット演習』(廣瀬正人 監修)ほか、シリーズ累計8万部。YouTubeで「西山真一の実践的マネジメント講座」を配信。(会社概要)

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